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関西・大阪21世紀協会は「文化力向上」「関西・大阪のイメージ向上」「水都大阪まち育て」の三本を軸に「関西・大阪の文化力向上」を目指します

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てっちり

大阪人とフグとの歴史

全国のフグの消費量のうち6割を大阪が占めていると言われている。この数字からも大阪人のフグ好きは間違いないようだ。大阪人とてっちりの歴史は古く、今や高級食材とされるフグも、昔は庶民の味だった。
阿倍野に始まった「づぼらや」は、もともとは庶民の台所として愛される定食屋であった。後に新世界に移り、戦前の庶民の食を支え続けた。戦前の新世界には万博もあり、大いに栄えた街だったのだそう。しかし、この頃はまだフグの食用が禁じられていた時代であった。
その後、昭和22年に大阪市条例でフグ食が解禁となる。これを機に、フグを扱う料理屋が一気に増えた。づぼらやでは、翌年、身とアラのダシに豆腐と青ネギを入れた「ふぐ汁」を考案。フグは身が少なく、食べるところが少ないが、アラからは品のよい上等なダシがたっぷりととれた。これがてっちりの原型となったとされている。「お客さんからのリクエストで、ふぐ汁に、うどんを入れたメニューも生まれました」と取締役の西島さんは話す。こうして、シンプルなふぐ汁は進化していく。
てっちりが生まれたのは昭和30年頃。「昔は一人前160円で、気軽に楽しめる庶民の味でした。家族でわいわい楽しむ大衆料理だったんです。ファミリーレストランの先駆けと言えるかもしれません」と言う。その後、てっちりを扱う店が急増し、35年頃には一般的な外食メニューとなり、38年にづぼらやが、テレビでCMを流し、多くの人が行き交う道頓堀にも店を構えると、ますます「てっちり」は、大阪の食として浸透していった。40年代に入ると、市場やスーパーでもフグが販売されるようになり、家庭の鍋としても定番化していった。
天ぷらや唐揚げで楽しむようになったのは50年代以降のこと。づぼらやでは現在、フグ寿司や白子のグラタンなど、豊富なフグ料理が揃う。
なぜ、フグ鍋と“てっちり”と言うのか。「てっちり」の言葉の由来は、鉄砲の塵(ちり)から来ているという説が有力だ。「毒があるけど、旨いから食べる」正に大阪人の喰い道楽がてっちり文化を育てたのだ。さらに、鉄砲の“鉄”と、大阪で水炊きのことを指す“ちり”が合わさってできたと言われている。さらには、当時「鉄ぽう」というフグを扱う有名店があったそうで、そこに由来するという説もある。

上品なフグの甘さを引き立てるポン酢は名脇役

淡白な味わいと評されるフグだが、ほんのりとした上品な甘さがその醍醐味だ。コラーゲンが豊富でお肌にもいい。とらふぐ、さばふぐ、からとふぐなど、フグの種類は2700種類ともいわれているが、中でも、身が厚いとらふぐはてっちりには一番適している。
まずは鍋に水と昆布を入れ、火にかける。昆布は少しで十分だ。沸いたら、フグのアラと白菜の芯から鍋に入れていこう。続いて、20種類以上の中から選んだという絹豆腐、吉野のくずきりを入れる。「昆布にはフグのアクを吸い取る役目もあるんですよ」と西島さんが教えてくれた。
そして、てっちりと言えばポン酢がつきもの。優しい味わいのフグの旨さを引き立てる名脇役であり、ポン酢がその店の味を支えると言っても過言ではない。「づぼらやのポン酢は、後継者のみが知る一子相伝の製法です。コクがありすぎず、塩味がしっかりとしているのが特徴です」と西島さん。手搾りしたスダチの果汁は甕に入れて熟成させる。寝かせることで、キリリとした酸味が、まろやかな酸味に変化し、コクが生まれる。今年、昨年、一昨年のものをブレンドし、酸味と香りを調整している。昔からの味の特長を守りつつも、時代に合わせて少しずつ改良を加えているという。コクを感じるが、ダシは一切使っていないのだとか。歳月という時間が、ダシにも勝る自然な旨みを作り出しているのだ。
白菜、キクナ、シイタケなど一般的な鍋野菜や豆腐などが揃うが、づぼらやには珍しい具材が入っているのも特長だ。それがナス。昔からナスにはフグ毒消しの作用があるとされてきたためだ。「ナスは鍋には合わないんです。味はイマイチかもしれません。そこで、一度、ナスを入れるのをやめたことがあるんですよ。すると常連のお客さんから『わしを殺すのか』とクレームが来たんです。やっぱり、てっちりにはナスは必要なんですね」と西島さんが面白いエピソードを教えてくれた。
この味を求め、四世代に渡り通う常連もいる。地方発送も行い、全国に幅広くファンを持つ。

養殖技術の進化を続けるフグ

一般的にフグの旬は冬のイメージがある。「でもね、フグが一番美味しいのは3月の彼岸を過ぎてから、ゴールデンウイークくらいまでなんですよ」と西島さんがとっておきの情報を教えてくれた。産卵を前に、十分に白子が大きくなり、紀伊半島や豊後水道にフグがあがってくるのだそう。「ここの天然もののフグが日本一だと、私は思いますよ」と西島さん。
フグの養殖技術の進化は目覚しい。「ここ10年ほどで、急速に進歩しています」と話すのは西島さん。街でも格安のフグ料理店を目にすることも多いだろう。以前までの養殖技術は、天然もののフグと、その味わいに大きな差があったという。フグは深海に住んでいるため、天然ものは身が引き締まっているが、養殖のフグは少々水っぽく、食べればすぐにわかったのだそうだ。しかし、技術の進歩により、今では天然ものとの差がほとんどないものもあるのだとか。「でも、やっぱり天然もののフグにはかないません。養殖のフグは味が薄いように思います。でも、料理法によって、いくらでも美味しく食べるようにできます。それが料理屋の仕事だと思っています」とは西島さんの弁だ。今では、フグの養殖は全国各地で行われ、また、温泉水を使ったり、プールで飼育したりとその方法も日夜進歩を続けている。
「づぼらや 新世界本店」は平成7年に建て直しをしたが、外観は昔のままの面影を大切に作りなおされている。「この新世界という町に馴染み、溶け込むような存在でありたいです」と西島さんは話す。下町情緒が残るこの町に、風情ある本店は懐かしさを感じさせる昭和の原風景なのかもしれない。大きなフグが、今日も楽しそうに、元気に新世界の空を泳いでいる。
「元旦以外の年間364日、いつでも、美味しいフグを用意しています。『づぼらや』の店名の由来は、お客さんに“づぼら”をしてくださいという意味があるんです。たまには、のんびりしてほしいんです。大阪人にとって、てっちりは大切な味ですから」と西島さんは締めくくった。


てっちり1人前2650円~。


「45年前のデータですが、全国のふぐの5割をづぼらやで扱っていたんですよ」と西島さんは言う。


ふぐ汁から進化したふぐうどんは、今もメニューにある。


ふぐを使った寿司などバリエーション豊富なふぐ料理が揃う。


てっちりには珍しい具材であるナスが入っているのが、づぼらや風だ。


今も風情ある街並みが広がる新世界。


ふぐの白子グラタンは女性に人気。

てっちりのシメは、勿論、雑炊で。
   

大阪市浪速区恵比須東2-5-5
11:00~23:00 / 元旦
地下鉄御堂筋線動物園前駅より徒歩5分、
堺筋線恵比須町駅より徒歩5分
TEL:06(6633)5529 
http://www.zuboraya.co.jp/
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